日本型エリート教育の行き先

先日、小5エクセレント(中学受験のコース)
の社会科の授業で
「産業の空洞化」という言葉を教えました。
今回はそれにちなんだ話をしてみたいと思います。

現代自動車という会社をご存知でしょうか?
現代と書いて「ヒュンダイ」と読みます。韓国の財閥です。
アメリカでは、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長中の
自動車メーカーとして知られています。

特にその売り上げの成長率は、かつての日本メーカーの
それをしのぐほどの勢いだといわれています。
トヨタがもうすぐGMを越えると言われていますが、
私としては、最近よく見かけるヒュンダイのロゴの車が
とても気になります。

中国では家電メーカーの競争が激化しています。
先日、IBMがPC部門を中国のメーカーに
売却したというニュースがありました。
ノートPCはずっとIBMを買い続けている私としては、
かなりショックなニュースでした。
WTOに加盟してからというもの、中国もすごい勢いで、
経済成長を遂げています。
中国には安い労働力があり、巨大なマーケットがあり、
日本以外の先進国もどんどん工場などを進出させています。

中国や韓国人の労働者はとても優秀で、
綿布が水を吸収するかのように、日本や外国の技術を
自国のものにし、安価な類似品を作って売りさばき、
このままでは、日本の製造業は中国や韓国に
キャッチアップされ、凋落の一途をたどるのでは?
というのが一般的な見方です。

これを教育の面から斬ってみると、
意外と面白い事実が見つかります。
かつての日本もそうでしたが、
現在の韓国や中国は、受験戦争が激しく、
エリート教育にかなり力を入れています。
現在の中国のトップグループと日本のトップグループとでは、
かなりの差がついてしまっているようです。
世界各国の中高生が集って数学の難問に挑戦するという
「数学オリンピック」というものがあります。
日本からは、開成、灘、筑駒などの受験エリートから
選出された者が参加しますが、
一度も中国に勝ったことがありません。

金メダルを取るのは中国ばかりで、アメリカ、ロシア、インド
などの代表チームも中国には歯が立たないのです。
そういう人たちが、中国のシリコンバレーと呼ばれている
中閑村ハイテクパークの中にどっと入り込んでいるので、
先進国からするとかなり脅威です。

ところが、これだけ頭のいい人材を擁した中国が
いまだに開発部門で日本をはじめとする
先進国に追いついてこない。これはなぜでしょう?

これはエリート教育に弱点があるのかもしれません。
つまり、暗記を中心に猛烈に勉強をさせて
知識を詰め込ませるという試験エリート育成教育が
子供たちに創造性をつけさせることができていないのでは?
ということです。

天才的な科学者のエジソンやアインシュタインは
いわゆる優等生ではありませんでしたが、
発明や発見に必要な仮説を立てる能力を兼ね備えていた
天才だったのです。
試験エリート教育は、学習能力は高くなりますが、
創造力を養うことにはなりません。

そして、自由な発想をする能力を鍛え、
創造力をつけさせるということは、
日本のゆとり教育のねらいでもあるのです。
これから必要とされる人材は、与えられる課題を着実に
こなせるだけでなく、何もないところから
何かを発明できる創造力の高い人になるでしょう。
日本のゆとり教育の「ねらい」は
意外と先進的なのかもしれません。

先月号の内容と似てしまいますが、
受験勉強に追われるだけではなく、
得た知識をさまざまなことに応用してみましょう。
そして、自分は何に向いているのか、
どんなことをしたいと思うのかなどを考えながら、
得意なことを伸ばせるように興味の対象を
どんどん広げていってください。
そういったことのお手伝いもKGCでは
考えていきたいと思います。

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