『受験』とその先にあるもの

受験生と話をするとき、
また、就職活動をしようとしている
学生と話をするときに、
「行きたい学校が見つからない。」
「何をしたいかわからない。」
という相談をよく受けます。

特に、近年のように不況が続き、先の見通しが
決して明るくないという雰囲気が漂っていると、
どこでもいいから、学校に入って、
親の庇護の下でモラトリアムを満喫しよう
という姿勢の学生が多く、
バイトをしたり、卒業して職に就いても
長く続かない者が多いようです。

私の友人で、技術系開発スタッフのアウトソースを
請け負う会社に勤めている者がいます。
彼は、毎年理系の学生を200人採用する部署の責任者で、
全国の大学を歩き回り、採用活動を行っています。
その彼の口癖は、「雇いたくても雇えない」です。
その理由は、
「目的を持って大学で勉強している学生が少ない。」
「自らを成長させる経験を積極的にしていない。」
「言葉遣い、礼儀作法がなっていない。」
などが挙げられるようです。

学生側は「自分が何をしたいのかわからない。」と言います。
この場合「自分は何に向いているのかわからない。」という
意味も含まれているようです。
そして、採用する側も
「この人は何をしてきたのかわからない。」
「この人は何をしたいのかわからない。」と思うようです。

皮肉なもので、今の受験生たちは、多様化する入試の中で、
自分が何に向いているかわからないまま、
将来の選択肢を狭められる環境にいます。
具体的に言うと、自分が文系か理系かわからないまま
その選択を迫られる機会がどんどん早まっているのです。
ほとんどの学校では高校2年生になるときに、
文系か理系かを選択しなければなりません。
また、大学へ行きたいのかどうかもわからないまま、
高校を選択させられます。

選ぶ高校によっては、大学へ行くことができる可能性が
なくなってしまう場合もあります。

「将来何をしていいかわからない」
という生徒や学生に対しては、
「とにかく何でもいいからやってみること。」
「体験することの中なら自分が好きなことを見つけること。」
と言うようにしています。これは私個人の経験からですが、
何か動いて、「本物の経験」をしてもらいたいと思います。

この先行き不透明な時代の中、企業はどのような人材を
求めているのでしょうか?
それは、「人とのかかわりの中で如何に上手くやれるか?」
「企業を進化させられる人材かどうか?」
を見ようとしています。短い面接時間の中で、
よく出てくる質問は、
「大学時代何をしましたか?」
「そのときの困難は何でしたか?」
「そのとき、どう対処しましたか?」です。
困難を聞くことにより、問題発見能力を見抜きます。
そして対処方法を聞くことにより、問題解決能力を見ます。
矢継ぎ早の質問で、コミュニケーション能力も試されます。
架空の経験は質問で見破られます。
また、「私には困難はありませんでした。」と答えると、
体験自体が薄っぺらいか、体験がなかったと思われます。
本物の体験には、必ず困難があるからです。

自分が何に向いているのか、何が好きなのか、
それに関する将来の選択を上手にすること、
それは困難に立ち向かう努力をした経験を
持つ人だけが手に入れることができるものかも知れません。
そして、その経験は特別なことをしなくても、
学校や塾などで簡単にできます。

目の前に与えられた課題に全力で取り組み、
自分の可能な限りの結果を追い求めることで、
困難を乗り越え、人としての器を
大きく鍛えてもらいたいと思います。

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